uedai blog

日々のこと、読書日記、徒然なるままに思うところ

ファイブ・スポット・アフターダーク


村上春樹の作品に関しては、意図を察しようとか、読み込むとかっていう行為自体に対して、ある種の諦めみたいなものを感じていて、そのため妥協して雰囲気を楽しむという立場に立って読んでいます。
今回もそんな感じで雰囲気を楽しむというね。


村上春樹の「アフターダーク」です。
内容は、深夜0時少し前から朝方にかけての夜の時間に起こった何かについての話。うまく説明することが難しいんですが、まあ題通りに「after dark」の話です。
まあとにかく、物語に関しての話よりも、細かい部分つついた方が面白そうなのでそんな感じでいきますね。


エントリタイトルの「ファイブ・スポット・アフターダーク」は、小説中に登場する題に関連する楽曲です。多分これもモチーフとして使われているものでしょう。ファイブ・スポットは、登場人物に当てはめて、マリ、エリ、高橋、 カオル、白川の5人のことじゃないかなぁとか勘ぐってます。
この小説は、いつもの村上春樹(といっても全作品読んだわけじゃないので経験的にという意味で)と違います。まず、「視点」というものがこの小説では重要になってきており、普段の村上春樹の小説ですと、大体がタフな男性の主人公視点で語られることが多いですね。とってもクールなやつ。でもこれはそういった「物語中の誰か」の視点ではなく、「物語に介入していない(できない)誰か」の視点で語られます。その視点が、鳥や登場人物の視点に重なることはあっても、それは登場人物の視点ではない。あと、文章の書き方が変だなぁと思いました。なんか村上春樹っぽくない。
そんでまあ、登場人物を別視点で見るということで、小説というよりも映画的な視点がよりわかりやすいのかなぁと思いました。それで、映画については小説中に一つこれというのが出てきます。それは、小説中に登場するラブホテルの名前に使われているジャン=リュック・ゴダールの「アルファヴィル」という作品です。
もうね、この人の名前は忘れねーよw伊坂の作品で相当数登場するからねw
どうやら、この作品はゴダールの「アルファヴィル」に影響されてる部分が多いみたいです。伊坂はさらにこの作品に影響されたのでしょう。複数人と時間軸を使うのは伊坂では多いですよね。ゴダール→春樹→伊坂的な感じ。
「アルファヴィル」の作品内容を少し紹介すると、感情を消されて統制された星雲都市アルファヴィルに諜報員が潜入するSF映画です。
感情を消すとかいう話は、現代批判的な映画や小説に多いもので、この「アルファヴィル」が出発点なのかなぁとか思ったり。「リベリオン」とかもそんな感じだった気がする。


何にせよ、そういった現代都市のafter darkの世界を、干渉不可能な視点で描き出した作品です。視点は、読者の視点と言ってもいいかもしれないですね。
現代都市のこういうダークな部分とかは村上龍とかの方がうまそうですけどね。