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uedai blog

日々のこと、読書日記、徒然なるままに思うところ

好きって絶望だよね A Lollypop or A Bullet

こいつは久々にすさまじいものを読んじまった……
今日は桜庭一樹の「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」です。
少し時間経ってしまったけど、がんばる。


内容は、中学生の山田なぎさはパートで忙しい母と家にひきこもり神となった兄と暮らしているが、そんな現状を変えるために日々「実弾」を求めている。そんななぎさに都会からの転校生で自分のことを人魚と言い張る海野藻屑が現れ、なぎさにちょっかいを出し始める。そんな藻屑を嫌いながらもなぎさは藻屑に惹かれていき…‥といった感じ。


ほんとに久々にすさまじいものを読んじまったーって感じでした。
桜庭一樹の「少女」に関連するものの集大成、というと過言かもしれないけど、とにかく「少女」という弱い生きものがなんなのかを文字通り物語る小説でした。
今まで桜庭一樹の作品は何冊か読みましたが(とはいっても有名どころを抑えきれていない)、「少女」という生きものがなんたるかをこの小説で初めて理解できた気がします。「推定少女」よりもこっちの方が「少女」を理解出来ると思う。


これは、最初に物語の顛末が書かれているため、なぎさの記憶から現在時点に至るように話ができています。そのためか、映画とかでバックミュージックが流れているような感じではなく、無音の世界でただ彼女たちの日常が動いていくような、静かでどこか遠くの出来事のように読めます。そうどこか遠くの出来事なんです。
タイトルにもありますが、この小説で一番重要なキーワードは「弾丸」、「実弾」です。
「実弾」は、「世の中にコミットする、直接的な力、実体のある力」です。小説中でわざわざ説明してるくらい重要な単語です。
山田なぎさは、「実弾」を欲しています。何故かというと、経済的に困窮している現状を打破するために、一人では何も出来ない子供な自分から脱却するために、「実弾」がほしいのです。
対する海野藻屑は、「砂糖菓子の弾丸」を撃ちます。これは、「体内で溶けてしまう」実弾ではない弾丸です。海野藻屑は、最後までなぎさに「砂糖菓子の弾丸」を打ち続けました。
彼女たちの共通点は、現実から逃げているという事実です。そして受け入れていたということ。海野藻屑は自分を人魚だと言い張り、現実から逃れているけど、虐待を受け入れています。山田なぎさは、中学卒業したらすぐに自衛隊に入って稼ぐと考えていて、現実から逃れようとしているけど、今は受け入れています。それが彼女たちを結びつけた点じゃないでしょうか。そうやって、彼女たちは現実から逃れるように現実に嘘をつき続けた。

「こんな人生、ほんとじゃないんだ。」
「きっと全部、誰かの嘘なんだ。だから平気。きっと全部、悪い嘘」

まあそんなこんなで、海野藻屑は現状を受け入れてしまい、現実から逃れることはできなかった。おかげで山田なぎさは、現実と向き合うことが出来たわけだけど。
個人的に、ストックホルム症候群だとか答えられたらやばいクイズだとか、物語に関連するワードを吐く兄が好きです。キャラだと熱い担任の先生。花名島はへたれ。


読んだあとだとこの小説が初めにライトノベルとして出たというのが信じられないです。なんだか社会派ミステリー小説だとか言われてるらしいですけど、まあそれも含めてライトノベルではないですよね。社会派ってのは自分的に納得できないですけど。虐待とかひきこもりについて扱ってるからだと思いますけど、これは歴とした「少女」の小説ですよ。

「子供に必要なのは安心、って担任が言ったんだよね?」
「だけど、安心って言葉の意味、わかんないね」

大人には分からない「少女」たちの悩み、苦しみがあるんです。


言い足りなさすぎて自分に憤慨してますけど、とにかくすさまじい小説なのでこれは読むべきだと思います。