読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

uedai blog

日々のこと、読書日記、徒然なるままに思うところ

殺人の追憶

殺人の追憶 [DVD]

殺人の追憶 [DVD]


邦画より韓国映画の方が圧倒的に重厚かつ余韻の残る映画であると思う今日この頃。
今回の「殺人の追憶」も余韻の残る素晴らしい映画だと思います。


あらすじ

1986年、ソウル近郊の小さな村で手足を縛られた女性の変死体が発見される。地元刑事のパク(ソン・ガンホ)が捜査に当たるが、手がかりのないまま、新たな犠牲者を出してしまう。ソウル市警からソ刑事(キム・サンギョン)が派遣されるも、パクとソは、捜査方法の違い、容疑者を特定できない焦りから衝突ばかり。その間にも犠牲者は増え続け…。

http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD4617/index.html


この映画は実際に起こった華城連続殺人事件を基にした映画である。
そのため、映画の随所に80年代の人々の生活風景、捜査手法、そして未解決事件である重厚さが垣間見える。日本で言えば、オールウェイズが昭和の風景を表していると言えるだろうが、まさにその雰囲気に近い。しかし、この映画ではフィルム・ノワール的な雰囲気を加えており、また韓国の郊外の小さな村における貧しさなども加味されており、より映画テイストな重厚さが伺える。この点は本当に素晴らしい。


この映画で最高に面白い点は人間模様、二人の刑事の対立から和解、そして逆転という流れが秀逸であること、そしてラストシーンだと言える。

映画の中盤までは事件が発生し、地元刑事のパク(ソン・ガンホ)とソウル市警から派遣されるソ刑事(キム・サンギョン)との捜査手法の対立など、コメディタッチで展開されるが、事件が泥沼化し、一向に進展しなくなると一転し、シリアスな展開になっていく。ここまでで面白いのはやり方が暴力的、自白を強制させるパク(昔の日本の警察みたい)と分析や情報から推理するソ刑事の対立がある中、事件が泥沼化するに応じて、ソ刑事の疲労が感じられ、捜査も暴力的になる。ここら辺は若いソ刑事の情熱やそれに対する失望、そして怒り、という若さが伺える心理展開。セブンのブラッド・ピットに共通する面白さがある。また、パク刑事も自身のやり方では犯人を捕まえられないと考え、ソ刑事を認めるようになる点も後半へと繋がる。
その後、有力な容疑者を見つけるもDNA鑑定が一致せず、事件は完全に闇の中に入る。ここでのソ刑事とパク刑事の役割が映画序盤と変わる点もベテランと若さの違い、また今までの関わりの中で学び学ばれ、そして事件の困難に対する憤りなどが垣間見える。


そして、ラストシーン、これがまた素晴らしい。ラストシーンでは、映画のタイトルとなっている「殺人の追憶」を思わせるように、事件から時がたったあとパク刑事が仕事をやめた(以前から刑事という職を変えるように言っていた奥さんのため?普通の会社員となっている))あとに殺人現場に訪れる。ここで一連の事件を思い出し、回想にふける。犯人を捕まえられなかった自身に対する憤りも遠い過去となってしまい、もはや過去の出来事であると思わせるシーンである。そこで、女子学生に同じように訪れた犯人らしき男の話を聞く。その際のパク刑事は昔の刑事の目に戻っており、犯人の特徴を聞くが、女子学生は普通の顔と答え、パク刑事の見開かれた目の顔のアップで映画は幕を閉じる。
初めにこのシーンで考えたことは犯人を再度捕まえる決意をする顔であったが、今思えば未解決であるこの事件の犯人は未だこの国のどこかですれ違うように生きており、国民の誰かとして溶け込んでいる、そういった現実に対する驚愕、恐怖を表現した社会に対するメッセージではないだろうか。


本作品は現実の未解決事件を取り扱っており、脚色しフィクションとして表現してはいるが、現実的なメッセージを残して終わる。刑事たちの憤り、そして犯人は未だ身近などこかで普通の人として生きている事実、そして逮捕の困難性が伺え、考えさせられる。後味が良いとは言えないが、非常に余韻の残る秀作であると思います。