uedai blog

日々のこと、読書日記、徒然なるままに思うところ

私の男


結構前に読み終わってたけどごたごたしてて書いてませんでした。
桜庭一樹の「私の男」読みました。

あらすじ

「私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。」
腐野鼻は幼いときに震災孤児として、私の男こと腐野淳吾に引き取られる。2008年6月、花が美郎との結婚を終えた後、突然淳吾は花の前から姿を消す。ふるいカメラを残して。フィルムを巻き戻すように、時は出会ったあの日まで帰って行く。


なんといっても、花と淳吾の関係がぐろくて恐ろしい。そして、最後の二人の出会いを見て、哀しくなる。これに尽きると思う。
二人とも、子供の頃に家族をなくし、欠損家族として生きる。そのような二人が出会い、互いを支えるように絡み合い、首を絞め合う。そんなどろどろして、抜け出せない蟻地獄のような物語だった。
読めば読むほど、異常になってしまった人間の有り様が描き出されており、正直気分が悪くなる。が、過去に遡る形式で書かれているため、どうしてこうなってしまったのかが気になり読む手を抑えることができなくなる。
そして、ラストの章で、出会いはキラキラした輝かしいものであったことを知る。そこで、また哀しみがこみ上げてくる。
互いに欠損家族であり(花に至っては家族ではなかったことを幼いうちに理解している。ここらへん桜庭一樹の小説だと結構あるけど、子供のころから思慮深いと思ったりする)、依存し合うことしかできなかっただろうけど、別の道もあったんじゃないの?って思ってしまう。そしてまた哀しくなる。
そんな絶望の中をぐるぐると降りていき、また戻ってしまうようなお話。


これだけ、どろどろして救いのない物語なのに、読ませてしまう、桜庭一樹の力みたいなものに触れられた作品でした。

Eternal Sunshine of the Spotless Mind

失恋の痛みを知る、すべての人へ

エターナルサンシャイン DTSスペシャル・エディション [DVD]

エターナルサンシャイン DTSスペシャル・エディション [DVD]


ここずーーーーーーーーっと、2週間ちょっとくらいインターンで朝から晩まで会社に駆り出されていたので、なーんにもてにつきませんでしたw来週TOEICのテストなんだけどね!
まー初めてだし実力を知るという意味では素で受けた方がいいんかな^^;
んでま、夜とか暇なわけで、映画とか見たいなーと思って借りてみました。「エターナル・サンシャイン」なんかのまとめサイトで見て気になってたので借りてみた。
んで、バタフライ・エフェクト並みに心に響いたのでエントリにしようと書いてます。
ちなみに「ショーシャンクの空に」も一緒に借りて見たけど、「エターナル・サンシャイン」の方がぐっときたな。「ショーシャンクの空に」も良い映画だったけど、そのときはこっちの方がぐっときた。


あらすじ

もうすぐヴァレンタインという季節。平凡な男ジョエルは、恋人クレメンタイン(クレム)と喧嘩をしてしまう。何とか仲直りしようとプレゼントを買って彼女の働く本屋に行くが、クレムは彼を知らないかのように扱い、目の前でほかの男といちゃつく始末。ジョエルはひどいショックを受ける。やがて彼はクレムが記憶を消す手術を受けたことを知る。苦しんだ末、ジョエルもクレムの記憶を消し去る手術を受けることを決心する。手術を受けながら、ジョエルはクレムとの思い出をさまよい、やがて無意識下で手術に抵抗し始める…… 。

エターナル・サンシャイン - Wikipedia


いわゆる恋愛ものに分類される映画なんですが、まーーー構成が難しい!なので、初見では結構混乱します。というのも、ストーリーの中で記憶を消すにあたって、現実の世界と記憶の世界が交錯し、またそれぞれの世界においても現在から過去まで様々なシーンが断片的に登場するので、現実、記憶、現在、過去のどこに位置するのかわかりにくく、シーンごとの繋がりもわかりにくい。
しかーし!ここがこの映画の神髄です。なんていったって「記憶、思い出」を扱った映画ですからね。だからこそ、断片的でぼんやりとした情景に表現されていて、それがまさに「記憶、思い出」の世界にぴったりなのです!
思い出してみてください。何か2,3年前の記憶とかを。最近見た夢でもいいです。今思い出してもらったような世界が映画で見事に表現されているのです。
シーンを断片的に映し出すだけではなく、それぞれのシーンの細部は表現されていなかったり(本屋のシーンで本が白くなっていくあたりとか)と細かい部分で「記憶、思い出」の世界を表現しようという取り組みがなされています。
とはいっても、断片的なので初見は本当に混乱します。自分も巻き戻してみたりしてましたw対策としては、混乱は頭の片隅に置いといて、次へ次へと見て、だんだんと全体像を見ていくのが良いと思います。まさに、記憶の中の世界のように、断片的で、全体を見ようとするとぼんやりする、だけど全てが繋がっている!この脚本は本当に素晴らしいなと思いました。


作中でジョエルは次々に消えていく記憶に対して、始めは消えて清々するといった態度を示していたけど、だんだんと楽しかった頃の記憶が消されていくと、それを消さないでほしいという意志が強くなっていきます。「この記憶だけは、残させてくれ!」と懇願するシーンもあります。そうして、どうにかクレメンタインとの思い出を消さないように逃げ回ります。
思い出が次々に消え出会いの思い出まできて、ジョエルは記憶を消すことを止めることを諦めます。出会いの思い出では、ジョエルはクレメンタインと一緒に忍び込んだ家から一人で帰ってしまいます。ジョエルは残って楽しめば良かったと後悔しますが、記憶では帰るところまでしかないため、それができない。そして、記憶を失うことを受け入れる。記憶の中のクレメンタインは「せめてサヨナラを言った事にしましょう」そして「モントークで会いましょう」と言います。ここで記憶は完全に消えます。この抵抗→受け入れるみたいな流れはよくあるパターンなんですが(バタフライ・エフェクトも世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドも)、結構自分は好きなタイプなんだなーとか思ったり。


映画のタイトルに戻ります。「エターナル・サンシャイン
日本語に直訳すると「永遠の日光」(笑) まあ、「永遠の輝き」といったところかな。
別れる手前の恋愛の思い出は残酷な物ばかりだと思います。嫌なことばかりが起きるから別れるわけですから。だけど、もう少し思い出すと、出会った頃や二人で初めてしたことなど、大切で輝かしい思い出があります。いつまでも思い出の中で輝き続ける「永遠の輝き」


失恋して気分が沈んでいる人より、今恋人とうまくいかなくて別れそうな人たちに楽しかった頃の思い出を思い出すきっかけになればいいなーと思います。

宵山万華鏡

ページが見つかりません - MSN産経ニュース
お久しぶりです。先日は京都で宵山がありましたね。
昨年より4万人多い35万人が参加したようです。僕も参加したかった。来年は是非とも参加して人混みにもみくちゃにされて、京都は怖いところだと言って帰ってきたいですね。

森見 登美彦
集英社
発売日:2009-07-03


ということで、友人から借りていた森見登美彦の「宵山万華鏡」をとうとう読み終わったので紹介したいと思います。
宵山万華鏡」は「きつねのはなし」に雰囲気は似ているものの、今までの小説観をうまく取り込んだものになっています。


題通り、宵山という一つのシーンで起こる様々な人の動きを万華鏡のようにくるくる描いています。雰囲気は「きつねのはなし」、章ごとの繋がりを描く方法は今までの小説で完成したものを使い、夜は短し歩けよ乙女の偏屈王のくだりが出たり、小説全体に今までの話を踏襲するようにしています。
中でもこの小説での肝は、様々な人の視点に立ち、万華鏡のようにくるくると宵山を描くことで、人の繋がりや宵山の数多な側面を描き出しているところにあります。これはすさまじい。もうどれが現実の話なのか、幻想の話なのか、わからなくなってくる。今までもいろいろなキーワードで小説全体を関連させることをしてきたが、今回のはより複雑に絡ませているなと感じました。
「きつねのはなし」で描いていた、京都の様々な人間の関係が織りなす不思議な糸の繋がりを今回もうまく描いているように感じます。すごい。


そして、万華鏡と言うだけあり、色彩も豊かで、読んでいる途中には脳裏に子供の頃のお祭りの景色が鮮明に描き出されていました。
この色彩感覚は、ジブリに通じるものがあるなぁと思う。宵山万華鏡はジブリで映画化してほしい。つか普通に映画化してほしい。視覚的に絶対面白い。なんか姉妹の話は千と千尋みたいだし。


そんなこんなで、超おすすめ。実におもしろかった!
色彩豊かな脳内映像の美しさ、今までの小説観を踏襲した小説としての深さ、人間関係が織りなす京都の不可思議さ、どれをとってもおもしろいの一言に尽きます。
今までの森見登美彦らしさとは一線を画すので、今までの小説があまり好きではない読者にもおすすめできます。

ブクログのパブー

AmazonのKindleAppleiPadを始め、今電子書籍が熱い!
書籍の電子化に伴って、新聞、雑誌、小説からマンガに至るまで電子化のあおりを受けている。
しかも、書籍をスキャナで取り込んで電子化するという事業まで生まれた。
個人的な願いになるが、書籍自体はなくならないでほしいけど、電子書籍化という一連の流れは、業界に大きな打撃と変革が起こすだろう。
書籍は、小説家や出版社のものではなく、一個人のクリエイティビティから生まれるものへ変わるのだ。


そして、またひとつ、電子書籍の変化から新たな事業が生まれた。


ブクログのパブー | 電子書籍作成・販売プラットフォーム


ブクログのパブー
いつもご利用させて頂いているブクログを開発したpaperboy&co.のサービスだ。
これは電子書籍作成・販売のプラットフォームを提供するサービスだ。
使ってないから詳しくは分からないけど、電子書籍の作成から販売までの一連の流れをスムーズに提供するサービスのようだ。
個人的に、電撃が走るようなサービスだと思っている。
この動きが拡大すれば、業界再編くらいの大きなうねりになると思う。


ということで、電子書籍を書いて一儲けしたいなと企むがそんな時間はないと思い出し鬱になるというお話でした。

チーム・バチスタの栄光

久々にエントリ書きますw
放置しているとかじゃないんだけど、いやこれだけ経ってるわけだし放置かwとりあえず、生きてますw
最近は、また急激に忙しくなったんで参ってますよ。出るはずのなかった消防大会にブラック授業とブラックゼミとブラックレポート……まー自分の効率が悪いんだわな。


ちょっと今さら感でまくりですけど、映画にもなった有名小説「チーム・バチスタの栄光」の紹介です。
僕は、映画化したたいていの小説が嫌いで(映画がほとんどひどい出来になってしまい、小説の魅力が減る)、かつ世間で流行っている小説は読まず嫌いなので避けていましたwたまたま借りられる機会があったんで読みましたけど、普通に面白かったです。


内容
万年講師の窓際医師田口は、高階病院長の特命の下、登場大学医学部付属病院で行われたバチスタ手術の連続術中死の原因を探るべく、バチスタチームのメンバーに聞き取り調査を始めることになる…‥といった感じ。


豊富な医療知識に則ったリアルな描写、下巻からのテンポ加速、個性的なキャラクタが織りなす深い心理描写、なるほどこれは「このミス」に選ばれてもおかしくない面白い小説だった。
驚愕すべきは、著者が現役の医師であること!医者なのに小説書けるなんて、君こそ田口か!って突っ込むところ違いますねw医師がこれほどの文章を書けるなんて、世も変わりましたなぁと思うところです。


事件については、連続術中死の原因が、単なる手術事故なのか、それとも悪意を持ったものなのか、と探りを入れていくのですが、その過程でもそれぞれのキャラクタの魅力を存分に引き出した展開となっていて、非常に喜怒哀楽激しく読めた。
注目すべきは、田口のパートナーとして調査に参加する白鳥だ。彼は、この小説の中で一番強烈なキャラクタだろう。上巻で田口が調査の甲斐なく、再び術中死が起きてしまい、お手上げ状態なところ現れた救世主かと思いきや、ものすごい変人、てか、うざいwでも、白鳥のおかげで、物語の流れに拍車がかかり、スピードアップしていき、物語に更にひきこまれていった。
少し残念だったのは、事件の真相が思っていた以上に浅いなーと思ってしまったこと。盛り上がっていたところ、そっちかー!って感じだったのでwいやまあ、あれはあれで有りだと思うけどね。


とまあ、そんな感じで世間を賑わした小説の人気の理由は、個性的なキャラクタとセンセーショナルな医療というテーマだと思いました。(なんか締めたw)


今後とも、更新は停滞気味……orz
やっぱり自分が勉強している内容についてでもエントリ書いていこうかしらね。そんな需要あるのかしら。そんなこと言ったら、このブログ自体ry…

世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド


村上春樹の最高傑作といわれている本作、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」、ついに読んでやったぜ……!
間違いなく村上春樹の最高傑作です。
作品に引き込ませる物語、テンポの良さ、構成、誰しもが考える普遍的なテーマ、どれをとってもトップの作品でした。是非とも一読しておきたい作品です。


ーあらすじー
一角獣が生きる壁に囲まれた街に影をはがされ入り込んだ僕が街の謎に迫る物語「世界の終わり」と、計算士という仕事で働く私が老博士より暗号化の中でも最高級のシャフリングを使う依頼を受け、事件の渦中へと入り込んでいくという物語「ハードボイルド・ワンダーランド」の二つで構成されています。


物語の内容に触れようとすると、物語の世界観やら物語中で出てくる専門用語(物語のみで使われる言葉)を一から説明しないといけないので、それは避けます。
とにかく、面白かったの一言です。だんだんとエンジンが掛かっていくように、物語は進展し読者を惹きつける。そして、結末の複雑な心持ち。久々に、小説という冒険の中に入り込めました。
最初のエレベーターのくだりだけでは、いつもの春樹のうんざりするような歌い回しかと思っていたけど、読み進めるとどんどん話が盛り上がり、それに応じて自分の読むスピードがぐんぐんと上がっていくのが分かりました。
どう面白いのかというと、二つのストーリーが共に独立して一つのストーリーであり、そしてそれぞれが面白いということもあるのですが、同時並行に並べるようにストーリーが進むことで、それぞれの物語の関連性が徐々に浮かび上がり、結末へと誘うやり口は天才的だと思います。
結末も悲しいラストだとも取れるし、同時に未来への希望とも取れるものになっており、読者自身に結末を投げるというよりか、想像させるように仕掛けていて、それが面白い。


悲しみと安息と、そして新たな希望に満ちたラストは読者に比類ない感動を与える。読後は清々しいのか、落胆なのか、複雑な心境になる。それでも、いや、だからこそ最高傑作の名にふさわしい作品だと言えるのだろう。
なんでもいいからとにかく読んで!と言いたい小説でした。

好きって絶望だよね A Lollypop or A Bullet

こいつは久々にすさまじいものを読んじまった……
今日は桜庭一樹の「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」です。
少し時間経ってしまったけど、がんばる。


内容は、中学生の山田なぎさはパートで忙しい母と家にひきこもり神となった兄と暮らしているが、そんな現状を変えるために日々「実弾」を求めている。そんななぎさに都会からの転校生で自分のことを人魚と言い張る海野藻屑が現れ、なぎさにちょっかいを出し始める。そんな藻屑を嫌いながらもなぎさは藻屑に惹かれていき…‥といった感じ。


ほんとに久々にすさまじいものを読んじまったーって感じでした。
桜庭一樹の「少女」に関連するものの集大成、というと過言かもしれないけど、とにかく「少女」という弱い生きものがなんなのかを文字通り物語る小説でした。
今まで桜庭一樹の作品は何冊か読みましたが(とはいっても有名どころを抑えきれていない)、「少女」という生きものがなんたるかをこの小説で初めて理解できた気がします。「推定少女」よりもこっちの方が「少女」を理解出来ると思う。


これは、最初に物語の顛末が書かれているため、なぎさの記憶から現在時点に至るように話ができています。そのためか、映画とかでバックミュージックが流れているような感じではなく、無音の世界でただ彼女たちの日常が動いていくような、静かでどこか遠くの出来事のように読めます。そうどこか遠くの出来事なんです。
タイトルにもありますが、この小説で一番重要なキーワードは「弾丸」、「実弾」です。
「実弾」は、「世の中にコミットする、直接的な力、実体のある力」です。小説中でわざわざ説明してるくらい重要な単語です。
山田なぎさは、「実弾」を欲しています。何故かというと、経済的に困窮している現状を打破するために、一人では何も出来ない子供な自分から脱却するために、「実弾」がほしいのです。
対する海野藻屑は、「砂糖菓子の弾丸」を撃ちます。これは、「体内で溶けてしまう」実弾ではない弾丸です。海野藻屑は、最後までなぎさに「砂糖菓子の弾丸」を打ち続けました。
彼女たちの共通点は、現実から逃げているという事実です。そして受け入れていたということ。海野藻屑は自分を人魚だと言い張り、現実から逃れているけど、虐待を受け入れています。山田なぎさは、中学卒業したらすぐに自衛隊に入って稼ぐと考えていて、現実から逃れようとしているけど、今は受け入れています。それが彼女たちを結びつけた点じゃないでしょうか。そうやって、彼女たちは現実から逃れるように現実に嘘をつき続けた。

「こんな人生、ほんとじゃないんだ。」
「きっと全部、誰かの嘘なんだ。だから平気。きっと全部、悪い嘘」

まあそんなこんなで、海野藻屑は現状を受け入れてしまい、現実から逃れることはできなかった。おかげで山田なぎさは、現実と向き合うことが出来たわけだけど。
個人的に、ストックホルム症候群だとか答えられたらやばいクイズだとか、物語に関連するワードを吐く兄が好きです。キャラだと熱い担任の先生。花名島はへたれ。


読んだあとだとこの小説が初めにライトノベルとして出たというのが信じられないです。なんだか社会派ミステリー小説だとか言われてるらしいですけど、まあそれも含めてライトノベルではないですよね。社会派ってのは自分的に納得できないですけど。虐待とかひきこもりについて扱ってるからだと思いますけど、これは歴とした「少女」の小説ですよ。

「子供に必要なのは安心、って担任が言ったんだよね?」
「だけど、安心って言葉の意味、わかんないね」

大人には分からない「少女」たちの悩み、苦しみがあるんです。


言い足りなさすぎて自分に憤慨してますけど、とにかくすさまじい小説なのでこれは読むべきだと思います。